MJG2011 展示 連動企画 CD JACKET DESIGN in JAPAN special long interview

アーティストのエネルギーが出ているジャケットにしないといけない

-- ジャケットと少し離れて、映像のことも聞かせてください。信藤さんはPVも作られていますよね。PVの時はどういう思考で作られてるんですか?

 スチールを動かすという発想で作っていますね。ここ数年はそれを徹底してカメラはとにかくフィックス。やたらと動かさないようにしています。

-- ジャケットのデザインと一緒にPVも依頼されると、デザインに影響はありますか?

 うーん。「まあね」って感じかな(笑)。アーティストによりますよね。すごい音楽だとすごいPVができるからね。どう考えても。映像はジャケットよりも音楽に寄り添うからごまかせない。そういう意味ではCDジャケットは映像ほど音とべったりの関係ではないから、嘘がつけますよ。なんとか良く見せることもできます。でも映像は嘘がつけません。とにかく音楽の質が大きく影響するものです。

-- CDジャケットだと音が最良じゃなくても、なんとかデザインでごまかしが利く。そうだとするとCDというパッケージをデザインするとはどういうことなんでしょうか。パッケージである以上、信藤さんがデザインとして形にしないとCDにならないですよね。しかもそのCDがCDショップの店頭では、リスナーと音楽を繋ぐ窓口になります。デザインをしている時にCDがCDショップに置かれていて、お客さんが手に取っているところまで思い浮かべるものなんですか?

 それは、そうですね。

-- そうだとすると、CDはやっぱり商品として流通して、たくさん売れないといけないものでしょうか?

 売れなきゃいけないっていうよりも、売れて欲しい。シンプルにそう思います。

-- そのためにビジュアル面で任を負っていると。

 ああ、そういう意識はありますね。経験を積んだアート・ディレクターという僕の立場では、A&Rという立場も兼ねてるわけじゃないですか。そうすると「どういうターゲットにどういう売り方をするべきか。だったらどういうジャケットがいいのか」というところまで考えなければいけませんから。

-- ただ単にデザインだけを依頼されているわけではないと。

 ええ。そうです。だから、売れるためにはアーティストのエネルギーのようなものがジャケットから出ているデザインをしなければと思っています。それがCDショップで手に取りたくなるジャケットだし、買いたくなるジャケットでもあるので。

-- アーティストの生身のエネルギーをジャケットに収めるためにはどうしたらいいんですか。魔法みたいなものに思えるんですが。

 例えば、今、エレファントカシマシがレコーディングしているとして、不思議なことにそのアルバムがいいかどうかってなんとなくわかるんですよね。音はまだ聴いてないし、レコーディングの現場にいるわけじゃないけど。
 誰かから「今、レコーディングをしてて、いつアルバムが出るよ」っていうような情報が来た時に、「そのアルバムは絶対いいよな」ってわかる感じは誰にでもあると思うんだよなぁ。そういった情報が伝わるのは、アーティストが持っているエネルギーがすごく出ているタイミングで起こること。だから、伝え聞いた人は自然にエネルギーを感知して、いい作品ができている気配を感じるんでしょうね。

-- いい具合で放出されているエネルギーは自然と周囲に伝わってくる。その気配を感じればいいということですね。

 これは自慢話みたいになっちゃうんだけど、ご飯を食べに行ったり、お茶を飲みに行ったりする時に、誰もいない店に入るとするじゃないですか。そうすると僕が入った後から、必ずお客さんがぞろぞろ入ってくるんです。どの店でもそういう経験をするんだよなぁ。能力と言っていいのかわからないけど、僕にはそういう力があるのかも(笑)。

-- それは信藤さんが持っている天性の能力なんじゃないでしょうか(笑)。だからいいフィーリングを鋭くキャッチして、形にすることができると。

 ははは(笑)。そうかもしれません。

-- では最後に。毛皮のマリーズなど新しく登場したバンドのジャケットも手掛けていますが、若いアーティストに接してみてどうですか。彼らは信藤さんよりもずっと年下ですが、信藤さんのビジュアルを必要としているんだと思います。

 最近、黒猫チェルシーにしろ毛皮のマリーズにしろ、若くて才能のあるバンドのジャケットの依頼が来るのはすごく嬉しいことですね。1990年くらいに戻ったようなフレッシュな気分になります(笑)。それに僕が携われることは幸せなこと。普通だったらありえないもん。

-- 今はいろんなことが過渡期ですけど、若くて面白いバンドがいっぱい出てきている時期ですからね。

 うん。本当に楽しいよね。CDも音楽業界もまだまだ捨てたものじゃない。